研究分担者 |
水田 義弘 広島大学, 総合科学部, 教授 (00093815)
吉野 正史 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00145658)
谷口 雅彦 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (50108974)
中西 敏浩 島根大学, 総合理工学部, 教授 (00172354)
佐官 謙一 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70110856)
|
研究概要 |
今年度は,おもに幾何学的函数論および等角不変量に関して研究を行った.以下にそのいくつかを列挙する. 1.等角不変微分作用素の研究(Seong-A Kim氏,Eric Schippers氏らとの共同研究) 古典的なPeschlの微分作用素を,滑らかな等角計量を持つリーマン面間の正則写像に対する微分作用素に拡張し,その基本的な性質について研究を行った.さらに,それらとシュワルツ微分や,その他の古典的な等角不変量との関連についても現在研究を進めているところである. 2.超幾何函数の双曲計量への応用(Matti Vuorinen氏らとの共同研究) 錐特異性を持つ双曲計量については,近年多くの数学者によって研究されつつあるが,その具体的な形についてはあまり知られていない.球面内の3点に特異性を持つような双曲計量は原理的には超幾何函数を用いて表現されるが,実際に便利な表現公式を与え,それを用いて種々の単調性を導くことに成功した.現在もこの方向での研究を進めているところである. 3.幾何学的函数論のSmale予想への応用(藤川英華氏との共同研究) Lakicらによって最近与えられたSmale予想に対する評価を,単葉函数論や双曲計量の性質を使って改良し,これまで知られているうちで最良の結果を得ることに成功した.現在,論文を準備しているところである. 4.タイヒミュラー空間と心臓形との関係の研究 1次元タイヒミュラー空間のベアス埋め込みを考えたとき,基点をモジュライ空間の中で境界に近づけたとき,その埋め込みの形が心臓形(cardioid)に近づくという予想を立て,少なくとも特別な近づき方の場合にはそれが正しいことを厳密に証明した.現在,この予想を完全に解決すべく研究を続けているところである. 5.円状幅の単葉性判定への応用(Yong Chan Kim氏,S.Ponnusamy氏との共同研究) 円状幅(circular width)は我々によって定義されたある種の等角不変量であるが,これを単位円周の内部や外部における正則函数の単葉性の十分条件を得るのに応用した.特別な場合に限っても十分面白い結果が得られることが分かり,現在も研究を進めているところである. 6.非線形積分作用素の研究(Yong Chan Kim氏との共同研究) 非線形積分作用素の研究を応用して,Robertsonの函数族についてのRobertsonの問題や,Merkesの問題を完全に解決することに成功した.
|