研究分担者 |
尾畑 伸明 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (10169360)
小澤 正直 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (40126313)
幸崎 秀樹 九州大学, 大学院・数理学研究院, 教授 (20186612)
植田 好道 九州大学, 大学院・数理学研究院, 准教授 (00314724)
洞 彰人 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 教授 (10212200)
|
研究概要 |
自由確率変数の漸近モデルであるランダム行列や,自由確率論に固有なエントロピーである自由エントロピーを基に,自由確率論の研究を行った.関連して,代数的確率論,作用素論,作用素環についても研究した.平成19年度の成果は以下の通りである. (1)日合・植田は自己共役作用素に対するVoiculescuのマイクロ状態を用いた自由工ントロピーの射影作用素に対する修正版を導入し,その基本性質を調べた.2つの射影作用素の自由エントロピーとVoiculescuのliberation理論における相互自由フィッシャー情報量の間の一種の対数ソボレフ不等式を示した. (2)日合・植田は上記(1)の射影作用素に対する定義を一般化して自己共役作用素の自由エントロピーに対する軌道アプローチを研究し,軌道アプローチによる自由エントロピー(次元)と通常の自由エントロピー(次元)の間に成立する関係式を与えた.軌道アプローチによる自由エントロピーはVoiculescuのliberation理論における相互自由情報量のマイクロ状態を用いた定式化としての意義がある. (2)尾畑はグラフに関係した調和解析・スペクトル解析を研究し,連結グラフのQ-行列が正定値になるパラメータの集合がグラフのある種の拡張で不変であることを示した.また,尾畑・洞は量子分解の方法によるグラフに関係した漸近スペクトル解析に関する一連の研究をまとめたテキストをシュプリンガー社から出版した. (3)小澤は集合論のブール値モデルの量子版として,フォン・ノイマン環の射影束で表現される量子論理に基づく集合論のモデルを構築し,ZFC集合論からその量子版への転送定理を確立した.さらに,量子力学における観測命題が量子モデルにおける実数に対する命題によって表現できることを示した. (4)幸崎は行列・作用素の平均の研究において自然に現れる多くの正定値関数が無限分解可能の性質をもつことをアダマール因数分解定理を基礎とする複素関数論の方法を用いて示した.
|