本研究では、これまで我々が研究・開発してきた、FX型の分光相関装置と電波天文観測用の4Gサンプル/秒・超高速A/D変換LSIを用いて、単一装置として世界で最も広帯域の観測帯域幅2GHzを実現する、超広帯域高分散分光システムを構築し、45m電波望遠鏡に搭載して超広帯域かつ高分散観測を行うことでその観測性能を評価する。性能評価の結果を基に、同システムの調整を行い、最終的に、高精度の2GHz帯域幅の遠方銀河の吸収線探査を実行する。具体的には以下のような研究を実施した。 1.超広帯域高分散分光システムの構築:FX型の試作相関器を三鷹から野辺山へ移設し、野辺山45m観測棟2階計算機室に搬入して単体試験を実施した(初年度)。また、これまでに開発した1ビットAD回路を内蔵でき、試作FX相関器と電気的にインターフェースするAD変換回路及びAD変換回路-相関器間のインターフェース回路を製作した。(初-2年度)。AD変換回路、インターフェース回路及び試作FX相関器を接続して、広帯域雑音信号を入力し、超広帯域高分散分光システムのパラメータの最適化及び性能評価を実施した(2-3年度)。 2.超広帯域アナログ信号伝送・変換部の構築:45m観測システムの中間周波数帯に対応し、上記超広帯域高分散分光システムが接続できるシステムを検討し、9GHzの局部発信信号と基準信号発生器を新規に用意し、それを既存の装置と組み合わせて、超広帯域高分散分光システムの入力信号を生成する伝送、変換部を組み上げられることを確認した(2-3年度)。 3.観測制御プログラムの開発:2年度に、超広帯域高分散分光システムのハードウエアがほぼ完成したことを受け、45m望遠鏡観測システム内で超広帯域高分散分光システムを起動・制御する観測用ソフトウエアの開発に着手し、45m望遠鏡観測システム内で、超広帯域高分散分光システムを時刻同期で起動できることを確認した(3年度)。
|