研究課題/領域番号 |
17340066
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
金谷 和至 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 教授 (80214443)
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研究分担者 |
宇川 彰 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 教授 (10143538)
青木 慎也 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 教授 (30192454)
早川 友照 (吉江 友照) 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 助教授 (40183991)
初田 哲男 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (20192700)
中村 純 広島大学, 情報メディア教育研究センター, 教授 (30130876)
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キーワード | QCD / クォーク / 状態方程式 / 格子ゲージ理論 / 有限温度 / 有限密度 / クォーク・グルオン・プラズマ / 相転移 |
研究概要 |
この基盤研究プロジェクトの目的は、高温・高密度におけるクォーク物質の特性をウイルソン型格子クォークを用いて量子色力学(QCD)の第一原理から理論的に解明することにある。ウイルソン型クォークを用いた研究はこれまでほとんど成されていないので、フレーバー数2の場合(u,dクォークまでの動的効果を取り入れた近似)から始めて、最終的には、2+1フレーバーQCD(動的なu,d,sクォークを取り入れた近似無しの格子QCD)における予言を目標とする。そのために、格子QCDの大規模シミュレーションを、主に筑波大学計算科学研究センターで開発中の専用並列計算機PACS-CSを用いて実行する。PACS-CSは平成18年度夏に稼働を解する予定なので、平成17年度は、PACS-CSでの本格シミュレーションに向けてのプログラム開発と、他の大型計算機を用いた準備研究を進めた。 プログラム開発では、第一に既に既存の大型計算機用に開発済みのゼロ温度シミュレーション用プログラムを有限温度シミュレーション用に改造した。同様の改造は、現在開発中のPACS-CS用ゼロ温度シミュレーションプログラムにもすぐに応用可能である。改造結果を詳細に検証し、次に述べる準備研究でシミュレーションに用いている。生成されたゲージ配位で、有限温度・有限密度QCDの物理量を研究する様々な解析ツールの開発に関しては、C++をベースとした格子QCDプログラム体系を利用して効率化を図る方針を決定し、そのための基礎開発を進めている。 準備研究としては、(1)フレーバー数2の場合のシミュレーションパラメータを決定する基礎研究として、筑波大の過去の研究結果を用いた等物理線(くりこみ群の流れ)の解析を行い、それに基づいて、小さな格子の配位生成を、既存の大型計算機を利用して開始した。生成された配位と、来年度以降PACS-CS等で生成する大きな格子での結果を合わせて、ウイルソン型格子クォークではまだ行われていない有限密度の物理量の研究を進める。これと並行して、(2)2+1フレーバーQCDの基本的性質としてのハドロンスペクトルの精密決定を進めた。これは、有限温度・密度における物理量を計算する上で不可欠の基礎データとなる。さらに、(3)本格シミュレーションで研究予定の物理量や応用予定の手法を研究した:(3.1)グルーオン物質の輸送係数をクエンチ近似格子QCDの数値計算により計算した。粘性係数とエントロピーの比が通常の物質よりはるかに小さい結果となった。(3.2)最大エントロピー法を用いてQCDハミルトニアンの準位密度を分配関数の逆ラプラス変換として得る方法を提案し、実際の格子データでテストした。(3.3)ハドロンのスクリーニング質量に対するアイススカラー型、アイソベクトル型の化学ポテンシャルの効果をTaylor展開法で研究した。
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