研究分担者 |
宇川 彰 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 教授 (10143538)
青木 慎也 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 教授 (30192454)
早川 友照 (吉江 友照) 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 助教授 (40183991)
初田 哲男 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授 (20192700)
大川 正典 広島大学, 大学院理学研究科, 教授 (00168874)
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研究概要 |
本研究プロジェクトは、高温・高密度におけるクォーク物質の特性をウイルソン型格子クォークを用いて量子色力学(QCD)の第一原理から理論的に解明することを目的とする。フレーバー数2の場合(u,dクォークまでの動的効果を取り入れた近似)の有限温度物理の研究から開始して、ウイルソン型格子クォークによる最初の有限密度シミュレーションの遂行と、最終的には、2+1フレーバーQCD(動的なu,d,sクォークを取り入れた近似無しの格子QCD)における予言を目標としている。平成18年度は、平成17年度に開始したフレーバー数2のQCDのシミュレーションを進め、相転移温度、クォーク間ポテンシャル、クォーク数サセプティビリティーについて研究した。これらは格子場の理論国際会議Lattice 2006(Tucson, Arizona, USA, July23-28,2006)で中間結果を発表し、クォーク間ポテンシャルに関してはPhysical Review Dに論文を発表した。その他の論文も準備中である。 相転移温度に関しては、CP-PACSグループによるWilsonクォークを用いた先行研究を拡大して、現状の中間結果としてNt=4で170-186MeV,Nt=6で164-179MeVを得た。Ntを6程度まで大きくすればスタガード型クォークとだいたい一致している。クォーク間ポテンシャルに関しては、2個のクォークのカラー状態(「チャンネル」)の違いによりクォーク間の力がどのように変わるかを研究した。クォーク・反クォーク間のカラー1重項ポテンシャル、カラー8重項ポテンシャル、及び、クォーク・クォーク間のカラー6重項、3*重項ポテンシャルを調べた結果、(i)相転移温度の2倍程度以上の高温では、クォーク間ポテンシャルにおけるチャンネルの違いは摂動最低次から予想される全体のカシミア係数に吸収可能で、チャンネルによらず同じパラメータを持つスクリーンされたクーロン型ポテンシャルでよく記述できることを示した。結果として得られた有効クーロン係数や有効デバイ質量は3次元有効理論の摂動から予想される振る舞いをしている。有効クーロン係数はスタガード型クォークの結果と矛盾はしていないが、有効デバイ質量は20%程度大きいことがわかった。また、ウイルソン型クォークとして初めて、有限密度におけるクォーク数サセプティビリティーの計算を実行した。スタガード型クォークによる先行研究と定性的によく似た結果が得られた。
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