研究概要 |
K中間子原子核、特に最も基本的要素であるK-pおよびK-ppの構造・生成・崩壊に関する理論的研究が深められた。その結果、K中間子原子核を高密度に凝縮させる力は、核子間を回遊する実のK中間子が引き起こすハイトラー・ロンドン的共有結合力であることが明らかにされた。これは従来から知られている湯川中間子に媒介される通常の核力と全く異なるメカニズムによるもので、通常の4倍も強いので、超強核力と命名された。 最近カイラル理論に基づきK-p相互作用が弱く、そのエネルギーは1420MeVにあるとの予言が広まっているが、その問題点について理論的研究がなされた。K-pの束縛状態がどこにあるかのデベートに決着をつける実験法が提案され、実行の準備が行われた。また、古い実験データの解析から、その束縛状態が1420MeVではなく1405MeVにあることが確認された。 高密度K-pp核はp+p衝突の中で大きな断面積で生成することが理論的に明らかにされた。それは3GeVという高いエネルギーでの衝突におけるLambda*(1405)の生成は、大きな運動量移行により短距離でおきるので、Lambda*の生成に関与するもう一個の陽子との距離は自動的に短くなり、高密度Lambda*p=K-ppが大量に生成するのである。そこで、この反応によるK-ppの実験的探索が行われた。DISTO実験で取得された陽子陽子衝突の古いデータをこの見地から解析した結果、束縛エネルギー103MeV,幅120MeVの状態が見つかり、その生成断面積の大きさから、予想どおりの高密度原子核が生成していることが判明た。
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