平成20年度においては、ゲージ理論におけるカイラル対称性の自発的破れを非摂動くりこみ群を用いて解析する方法を研究した。特にゲージ理論としては、任意のカラー数、フレーバー数を扱って、カラー数とフレーバー数依存性についての物理量の依存性について調べられるようにした。 本来は、カイラル凝縮に対する有効ポテンシャルを計算することによって、カイラル対称性の自発的破れの大きさ、スケールが評価可能であるが、有効ポテンシャルを計算するのは非常に困難な場合が多い。そこで我々は、非摂動くりこみ群の低い次数のオペレータに関するベータ関数のみを用いた禁じ計算方法を作り、それによってカイラル対称性の破れのスケールの評価を試みた。 第1の方法は、あるくりこみスケールにおいて、理論を南部・ジョナラシニオ模型に射影する方法である。南部・ジョナラシニオ模型においては、梯子近似における臨界結合定数が分かっているので、この射影によって、その臨界結合定数を超えるスケールをもって、カイラル対称性の破れのスケールと定義する。この方法は恣意的に見えるが、これまでも素粒子のモデル構成の際に、自発的対称性の破れのスケールを評価するのにたびたび用いられてきた議論と同等である。 第2の方法は、裸の質量項を加えて、それをソースとして直接、カイラル凝縮の大きさを評価するものである。裸の質量項を0に持っていく極限で自発的対称性の破れのスケールが得られる。くりこみスケールを下げていくにつれて、自発的に対称性の破れた相に入ることがみてとれる。 この二つの方法を一般のカラー数とフレーバー数について解析した。二つの方法は相互に矛盾しない結果を与えた。また、カラー数が大きい極限の値と実施の量子色力学におけるカラー数が3の場合は、フレーバー数が3においてはほぼ一致していること、梯子型近似とそれ以外の項を加えた場合との差が、任意のカラー数、フレーバー数において非常に小さいこと、を得た。これらの結果は、他の近似方法における大きいカラー数近似が比較的良い結果を与えていることを保証する理由を与えたことになる。
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