多重エアロジェル輻射体という新しいアイデアに基づくリングイメージング型チェレンコフ検出器(RICH)の開発研究を行った。多重エアロジェル輻射体とは、屈折率が異なる複数枚のエアロジェル輻射体を粒子の通過方向に配したもので、これによって、RICH検出器の性能限界の要因となるチェレンコフ光発生点の不定性による角度分解能の悪化を避けながら検出光子数を増加させることが可能となる。以下の成果が得られた。 ビームテストによる原理検証 KEK-PSのテストビームラインにおいて、2重〜4重輻射体を用いた原理検証実験を行い、これまで単輻射体で得られていた角度分解能(約13mrad)を保ったまま、検出光子数を約1.5倍(約6個から9個へ)改善できることが実証できた。この成果は論文として発表した。また、輻射体の屈折率や厚さの組み合わせ方の最適化に関する考究を進めた。 エアロジェル輻射体の性能改善 この検出器原理に最適な輻射体として、二層ないし三層の異なる屈折率層を持つ一体型エアロジェル輻射体の製作方法の考究と試作を行った。単層タイプと同程度の透過率など良好な結果を得つつある。 光検出器の開発 600nm程度の長波長領域に感度の高い光検出器を用いれば、エアロジェルの透過率は格段に良くなり、多重エアロジェル輻射体の上流側輻射体で発生したチェレンコフ光を有効に捉えることができる。そのような光検出器として、SiPMと呼ばれる半導体検出器に注目し基礎特性の測定を進めた。
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