1)前年度に確立したFADCデータによるPMT波形情報を用いたチェレンコフ光量測定手法を元に、100GeV領域の高エネルギーのvisibleエネルギー(Evis)を持っfully contained事象のエネルギー再構成を行う手法を開発した。この手法を用いて、FADC導入後のSK2大気ニューニトリfully containedサンプルの解析を行い、20GeV以上の高エネルギー事象では、ADCオーバーフローのため従来のvisibleエネルギー測定は最大2倍低く見積もっていることが分かった。 2)SK2の10GeV以上の高エネルギーfully containedサンプルに対して、電子ニュートリノ荷電カレント反応を抽出するカットを行い、高エネルギー電子ニュートリノサンプルを作成し、前述のFADCによるエネルギー再構成を行いニュートリノエネルギー分布を導いた。10GeV以上では、これまでFrejus実験による大気電子ニュートリノエネルギー測定のみであったが、その結果をさらに高いエネルギーまで高い統計で拡張することができた。また100GeV以上のVisibleエネルギーを持つ高エネルギー電子ニュートリノ事票は0イベントで、大気ニュートリノから予想される0.3イベントと矛盾せず、天体やニュートラリーノ対消減から期待されるような高エネルギーニュートリノは発見されなかった。 3)上記1)2)の結果は修士論文としてまとめられた他、物理学会での発表を2度行った。 4)スーパーカミオカンデで使用されている20インチPMTに、非常に早い立ち上がり(数100ps)を持つ窒素レーザーを照射して、応答線形性やダイナミックレンジを調べた。その結果、少なくとも約700光子入射までは20インチPMTはよい線形性を持っていることが分かった。 5)SK2、SK3のためのFADC較正作業を行い、FADC解析ルーチンやMCを整備した。 6)上向きミュー事象にも対応できるFADCトリガーを検討したが、外水槽電子回路の大幅変更が必要であることがわかった。 7)2004年12月のSGR1806-20の巨大フレアからのニュートリノ探索を行い、ICRC2005で報告した。また上向きミュー事象を用いた天体ニュートリノ探索を続け、2本のレフリー付き論文を出版した。本研究に関連して、大気ニュートリノ振動中のタウ事象解析と大気ニュートリノ3世代振動解析の論文を出版し、タウニュートリノ同定、高エネルギー電子ニュートリノ抽出法を確立した。
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