研究課題/領域番号 |
17340079
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岡本 宏己 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 教授 (40211809)
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研究分担者 |
伊藤 清一 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 助手 (70335719)
野田 章 京都大学, 化学研究所, 教授 (20114605)
生出 勝宣 高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (50150008)
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キーワード | クリスタルビームー / 線形ポールトラップ / 非中性プラズマ / 空間電荷効果 / レーザー冷却 / 加速器 / イオンビーム |
研究概要 |
"S-LSR"のラティス構造を正確に考慮した分子動力学シミュレーションにより、理想的な状況下でのビーム結晶化条件について検討した。単一集束周期当たりのベータトロン振動の位相進みが90度を大きく超える場合に関しては、予想通り、低次の共鳴不安定性によるビーム冷却阻害が発生することを確認した。ただし、線密度が十分に低ければ、共鳴による加熱を抑えて固体相へのビーム相転移を実現できる。ベータトロン振動の位相進みが90度以下の場合、多重殻構造をもつクリスタルビームの生成が原理的に可能である。しかしながら、極低温領域では、軌道偏向磁石が生む運動量分散が深刻な加熱源になる。運動量分散加熱を抑制するには"テーパー冷却"が不可欠であるが、今回実施したシミュレーションの結果から、安定なクーロン結晶をつくるには冷却力のテーパー化を高い精度で達成する必要のあることがわかった。S-LSRには軌道偏向部に静電デフレクターが装備されており、双極磁場と併用することで線形の運動量分散を理論上完全に消去できる。この静電デフレクターによる"dispersion-free mode"のシミュレーション計算は現在進行中である。予備的な結果を見る限り、この運転モードはテーパー化された冷却力を必要としない。 理論的計算と平行して、既存のリニアポールトラップを使った^<40>Ca^+プラズマの捕獲実験およびレーザー誘起蛍光計測系の調整を実施した。波長397nmおよび866nmのレーザーを照射することにより、実際にカルシウムイオンからの誘起蛍光を観測することに成功した。観測データからプラズマの軸方向温度を評価した結果、数値実験等から予想された値とほぼ一致する約2500Kを得た。レーザー冷却を行うには、波長制御系の改良が必要である。
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