研究課題/領域番号 |
17340080
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中村 純 広島大学, 情報メディア教育研究センター, 教授 (30130876)
|
研究分担者 |
稲垣 知宏 広島大学, 情報メディア教育研究センター, 助教授 (80301307)
国広 悌二 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (20153314)
初田 哲男 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (20192700)
保坂 淳 大阪大学, 核物理研究センター, 助教授 (10259872)
|
キーワード | QCD / 国際共同研究 / 極限状態 / クォーク / 閉じ込め |
研究概要 |
有限温度・密度状態の研究が高エネルギー重イオン反応で進んでいる。特に米国RHICでは初めてクォーク・グルーオン非閉じ込め状態が実現したと考えられている。 この状態をQCDに基づいて研究するために、輸送係数を数値的に計算した。この計算は、精度が非常に悪く、これまで不可能と考えられてきたが、改良された作用を使い、100万回程度の大規模モンテカルロ統計を収集することによって始めて結果が得られた。その結果、粘性係数とエントロピーの比は非常に小さく、ほとんど完全流体のように振る舞う可能性があることが明らかになった。これは完全流体の流体モデルが実験をよく説明することの基礎付けとなる。 また、RHICで実現されている小さな密度状態を調べるために、ハドロンの遮蔽質量をテーラー展開法によって計算した。中間子は、閉じ込め相では重粒子密度の影響をほとんど受けないが、非閉じ込め相では大きな影響がある。アイソベクトル型の場合は、閉じ込め相でもその影響が見られる。今回、中間子に加えて核子まで計算が進み、また軽いクォーク質量までの計算も整い、カイラル極限を取ることにより、より定量的なデータとなってきた。 次に、閉じ込め機構を理解するために、瞬間相互作用によるクーロン・ポテンシャルを計算した。また、ファデーエフ・ポポフ演算子の固有値を計算した。このクーロン・ポテンシャルは閉じ込めポテンシャルとなり、また格子サイズを大きくしていくとゼロに近い固有値が優勢になり、グリボフ・ツバンチィガー予想が成り立っていることを強く示唆している。 しかし、非閉じ込め相が実現されている温度でも、閉じ込めポテンシャルとなっており、これは、この領域でQCD物質は非常に複雑な機構を示していることを反映していると思われる。
|