研究課題/領域番号 |
17340083
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
片山 伸彦 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (50290854)
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研究分担者 |
赤井 和憲 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教授 (10184061)
尾崎 均 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助手 (10177214)
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キーワード | 素粒子 / 加速器 / CP対称性の破れ |
研究概要 |
昨年に引き続き物理のシミュレーションを行なった。シミュレーションの結果、第一測定点を衝突点へ近づける事の有効性が再確認された。加速器の性能向上の為の種々の改良のうち多くは衝突点付近の拘束条件をより厳しくするものであり、慎重な検討が必要とされる。イタリアにおいて計画が進められている、スーパーBファクトリ計画では、ナノビームという新しい方式が考えられており、このオプションをスーパーKEKB Bファクトリでも採用する事が出来れば、超扁平型ビームパイプ方式の利点を生かしつつ、加速器の衝突性能を向上させることが可能かとおもわれたので、新しい衝突方式についても研究を行う事にした。この方式の利点は、スーパーKEKBで提案されているビームオプティクスに比較して、更にバンチの大きさが小さく、しかしバックグラウンドが小さいと言う事である。 また、Belle測定器の改良に関しても、単にビームパイプの形状および径について検討するだけでなく、測定器全体にかかる磁場、電子陽電子エネルギー非対称性の度合い、測定器立体角、前方〜超前方測定器などについても物理からの要求を考慮して総合して最適化しなければならない。特に測定器の磁場と電子陽電子エネルギー非対称性については、加速器衝突点設計に大きくかかわりがあり、早い時期に決定しなければならず、したがって、シミュレーションに関しては、衝突点付近のみの簡易的なシミュレーションではなく、測定器全体と加速器のコンポーネントを含めたGeant4によるフルシミュレーションを早急に始めなければならないことがわかった。 これを目標として、Super Belle測定器のシミュレーションを行なうことが出来る環境整備にほぼ一年を費やした。すなわち、Belle測定器用ソフトウエアは、Belle実験開始以前に作成され、それ以降に開発が終了し、公開された、次世代シミュレーションツールキット、Geant4をそのまま使用する事は不可能であった。Bellグループでは、前年までに、Geant4を試用して、使用できる事は確認したものの、Belle測定器用ソフトウエアと一体として使用することは非常に困難であるとして、開発は一時中断していた。Geant3と整合性が取れ、独自のバージョンのCLHEP、evtgenが組み込まれているBelleソフトウエアを壊すことなく、Geant4を使用できるようにするために、新たに名前空間を定義し(Belleソフトウエアのほとんどすべてのソースファイルについて改変を行い)、前年までに開発されていたSuper Belle用のGeant4シミュレーションプログラム(第0バージョンといってよいほど未完成である)をBelleソフトウエアに組み込んで、来年度からのシミュレーションコードの開発が可能になるよう準備した。
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