研究課題
ILC(1nternational Linear Collider)は、横に約550nm、縦に4nmという微小な電子と陽電子ビームを衝突させて物理実験を行なうために、加速器の機器、特にビームをガイドし、収束させる電磁石の振動および変位が小さくなければならない。ビームが衝突する加速器中心付近では、その垂直方向の振動が1nmを越えてはならない。そのためILCの建設候補地では、地盤の常微動が小さくなければならず、また地盤変動も長期的に安定でなくてはならない。以上の観点からILC建設候補地として、北上地区、阿武隈地区、北茨城地区、そして福岡・佐賀地区に広がる花崗岩地帯を調査・検討してきたが、本年度はトンネルの構築法も含めて、この検討をより具体的に進めた。この結果により、ILC-GDE(ILC Global Design Effort ; ILC国際設計事務局)のILC-RDR(ILC Reference Design Report ; ILC基本設計書)中のアジアサイトモデル地区をまとめるための資料を提供することができた。また、我々の検討を客観的に評価していただくために、日本土木学会の岩盤力学分科会およびトンネル工学分科会合同で、リニアーコライダー土木技術研究小委員会を本年度立ち上げていただき、本委員会は評価作業を開始した。この委員会には我々もオブザーバーとして入り、我々の検討結果の説明をすると同時に、加速器に関連した検討について助言を与えた。平成18年度は4回の作業部会が持たれ、その評価作業結果は、中間報告として平成19年3月に提出された。また、ILC用テストビームラインとして建設予定のATF2の建設予定地の床の変動調査を行い、その結果をIWAA06(国際加速器アライメントワークショップ2006)で発表した。さらに、ビーム衝突点付近の電磁石の振動をいかにして1nm以下に抑えるか、その技術検討を行った。本研究は、東京大学山下了氏を中心とした「次世代加速器素粒子実験のためのナノメーター振動制御システムの実証研究」で製作された除振架台に対し、その電気制御部を最新技術PLC(Programable Logic Controler)を使って構築し、共同で種々の性能試験を行ったものである。我々は、振動計とフィードバック機構を持った通常の防振台では、0.1Hz以下の遅い変位には対応できないことをつきとめている。この欠点を克服するために、変位計とカムムーバー方式の粗調整部およびピエゾ素子を使った高速、超精密調整部の組み合わせのフィードバック機構を提案した。この方式が有望であることが、本年度の性能試験で分かった。研究結果は前出のIWAA06において発表された。
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IWAA-2006-FR002 (Contributed to the 9^th International Workshop on Accelerator Alignment. SLAC. California. USA. September 25-29. 2006) 2006-42
ページ: 10
KEK Preprint; IWAA-2006-TH003 (Contributed to the 9^th International Workshop on Accelerator Alignment. SLAC. California. USA. September 25-29. 2006) 2006-42
ページ: 11