研究概要 |
本研究は相転移点近傍で光により結晶内に励起された電子と、協力的相互作用が結合し出現する光誘起バイブロニック型強誘電性量子協力現象に着目し、この電子系が寄与する協力現象を動的機構の観点で統一的に解明することを目的としている。本年度は最終年度として新奇光誘起相転移の実現のために作成した強誘電性ビスマス層状ペロフスカイト(BLP)(Ba_2Bi_4Ti_5O_<18>(BBT),Sr_2Bi_4Ti_5O_<18>(SBT))と、量子常誘電体で光伝導性を制御したNi-doped KTaO_3において電子励起を伴った光励起下で超低振動数分光実験を行った。<Bi層状ペロフスカイト(BLP)の結果>BBTとSBTのそれぞれで特徴的な光誘起効果がUV光照射下の低振動数光散乱スペクトルに観測された。BBTではUV照射により0.7psの寿命をもつ光誘起状態の存在を示唆する新しいセントラルピークの観測に成功した。またSBTではUV照射により強誘電性ソフトモードの著しい不安定化を観測した。BLPに現れる光誘起状態は構造の低次元性を反映した新しい光誘起量子協力現象であると考えられる。今後さらにBLPで体系的な研究を行うことで光誘起量子協力現象の普遍的解明が期待される。<量子常誘電体の結果>50K以下の温度領域で前年度発見した約10cm^<-1>程度に観測されるソフトモードについて光・電場誘起効果を調べた。DC電場&UV光照射下で低振動数光散乱スペクトルを観測した結果、特徴的な光・電場誘起効果が観測された。低電場印加下では低エネルギーモードの不安定化と線幅の増加が測定される。一方、高電場印加下では光電場誘起効果は現れず、電場印加値には光電場誘起効果に対して最適値が存在することが分る。本研究により電子状態を含む新しいソフトモード概念の構築に重要な知見を得ることに成功した。
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