非対称単位胞をもった金属フォトニック結晶では回折光強度の不均衡のため、垂直入射でも光起電力が生じることを実験的に明らかにした。この光起電力は波長に依存し、その振る舞いは入射光、反射光、透過光、回折光と電子系の間で並進運動量の保存が行なわれるとして散乱行列法で数値計算した結果は、実験結果の波長依存性をよく説明している。また回折を生じないメタマテリアル領域の光起電力を測定した。負の屈折を示す金/アルミナ/金の3層膜に正方配列で円形の孔を空けた構造を作製し、光起電力を測定することにより、負の屈折領域のモードが負の群速度を持っていることを実験的に明らかにした。さらに厚さ40nmほどの金薄膜に電子線リソグラフィーで円孔を正方格子であけた試料を作製し、円偏光レーザパルスを入射した場合に入射面に対して垂直な起電力(横起電力)が発生することを発見した。起電力の向きは円偏光の向きによって反転する。散乱行列による数値計算でも、そのような信号が発生することが確認された。この円偏光励起による横起電力は円偏光の角運動量が電子系に移行して、回転電流となり、その結果生じた磁場によってホール効果を生じたと解釈することもできる。この観点にたって、実際に電子系に移行した角運動量を見積もるために、透過光および反射光の偏光解析(エリプソメトリ)を行なった。斜入射で円偏光を試料に照射すると、反射光および透過光は楕円偏光となる。この楕円率と方位角から、反射光および透過光の角運動量を見積もり、試料内部に移行した角運動量を見積もった。回折光のもつ運動量は回折光強度が弱いため、無視した。その結果、入射波長に依存して角運動量が電子系に移行することを見出した。本研究では、金属フォトニック結晶の光応答を光起電力に注目して調べ、並進運動量と角運動量によって概略が説明できることを明らかにし、新しい研究分野を切り拓いた。
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