研究概要 |
ハーフメタリック物質は一方向のスピン電子については金属であるが、反対方向のスピン電子に対しては絶縁体である物質である。このような物質はホイスラー合金をはじめ、最近では希薄磁性半導体でも見つかっており、スピントロニクス材料として注目を集めているが、これらはすべて強磁性である。これに対して磁化が全体として消えるような場合をハーフメタリック反強磁性と呼んでいる。従来から理論上の可能性が指摘されており、プロフスカイト型金属間化合物の2、3の例がこれにあたるとされているが、いずれも実験による実証はされておらず、実在は疑問視されてきた。本研究では半導体をベースにすればこのような特別のタイプのスピントロニクス材料が開発できると考えて、 III-V族およびII-VI族化合物半導体、TiO_2やカルコパイライト型I-III-VI_2、II-IV-V_2化合物半導体をベースに、磁性遷移金属イオンペアー(d^8,d^7)および(d^4,d^6)をはじめさまざまな可能性について探った。これらの内のいくつかは、明らかなハーフメタリック反強磁性を示すことが明らかになった。また、平均場近似のもとに磁気転移温度を見積もったところ、室温を十分に越えるものも多く、実用スピントロニクス材料としての可能性も見えてきた。ハーフメタリック反強磁性実現の可能性は従来から探索されてきたホイスラーやペロフスカイト型をベースにした物質よりもはるかに高く、また良く知られている半導体をベースにしたものであるために合成も容易であると考えられる。これらの物質の輸送特性についても、DC伝導の計算を進めた。
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