本研究においては、特にf電子系物質(希土類元素を含む化合物)を主な対象として、常圧から40GPa(約40万気圧)までの外部圧力によってその格子定数および電子混成強度を連続的に制御し、その結果生じる電子状態の変化を赤外分光実験によって調べることを目的とした。高圧発生はダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いて行った。またDAC内部の限られた試料スペースで精度よく赤外分光実験を行うため、大型放射光施設SPring-8の赤外ビームラインBL43IRを用いた。最終年度であるH19年度は、前年度までに行った装置整備およびお予備的実験の結果を受けて、さらに実験を拡大した。即ち測定対象として圧力印加によってf電子の局在性が増していくと予想されるYb化合物の中から、YbAl_2およびYbSを選んだ。その結果、いずれの物質においても赤外反射スペクトルの顕著な変化を見いだした。すなわちYbAl_2においては常圧で観測された特徴的な中赤外吸収が加圧と共に低エネルギー側へシフトしていき、YbSにおいては加圧によって半導体から金属へと変化し、さらにYbAl_2と同様の特徴的な中赤外吸収が現れることを見いだした。これらの結果は圧力によって電子状態が大きく変化することを示している。従来常圧で様々なf電子系物質の赤外分光実験を行ってきた実験結果と、今回得られた高圧下の実験結果を比較することにより、今回高圧下で観測された結果はf電子(正孔)の混成エネルギーが変化したためであることを示した。
|