研究概要 |
特にf電子系物質を対象として、そのユニークな物性の起源となるf電子と伝導電子の混成した「c-f混成状態」に対して、外部圧力を加えて混成の強度を連続かつクリーンに制御した際の電子状態の変化を赤外分光によって調べることを目的とした。この際高圧セルに封入した微小試料の赤外分光を正確に行うため、大型放射光施設SPring-8の高輝度シンクロトロン放射光を赤外光源として用いた。まずダイヤモンドアンビルセル(DAC)2セットなど、高圧実験に必要な装置を購入して高圧実験を開始した。最初は室温での高圧実験を遂行し、価数揺動金属YbAl_2において常圧から10GPaまでの圧力印加により、常圧で観測されたmid-IR吸収が低エネルギー側に大きくシフトして消滅することを見いだした。これはYb系において格子定数の減少と共に電子系が局在性を帯びていくことに対応しているとして解釈した。また単体Ybにおいても、40GPaまでの実験を行い、圧力による大きなスペクトル変化を見いだし、その電子状態が圧力によって大きく変化することを示した。さらに充填スクッテルダイト化合物CeRu_4Sb_<12>において低温での高圧実験も行い、加圧によって混成ギャップが大きくなっていくことを示した。これは格子定数の減少と共にc-f混成が強くなった結果と解釈できる。以上により低温・高圧での赤外分光に必要な装置とノウハウを蓄積できたため、今後は重い電子系の高圧赤外分光を更に推進していき、特に圧力誘起量子臨界現象に伴う電子状態を調べていく予定である。なお高圧実験と並んで常圧での研究も継続した。そして多くのCe,Yb化合物で観測される赤外光学伝導度のmid-IR吸収が、各物質の混成強度との間に普遍的な関係を満たすことを示した。これは重い電子物質の励起状態に関して普遍的な関係が存在することを示した点が大きな意義を持つ。
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