研究概要 |
混合原子価化合物Sm_4Bi_3,Eu_4As_3は、常圧力下で立方晶から三方晶への構造変態をともない価数揺動状態から電荷秩序状態へと転移する。すなわちこの電荷秩序移転は1次相転移である。この電荷秩序転移温度はSm_4Bi_3では加圧により低下し、約2GPaで大きな体積減少を伴い電荷秩序自体が消失していることが、高圧力下X線回折、電気伝導測定の結果から分かっている。一方、Eu_4As_3については昨年度の我々の高圧力下X線回折測定結果、Sm_4Bi_3の場合とは異なり、電荷秩序転移温度は加圧により上昇することが分かった。すなわちEu_4As_3において圧力は三方晶結晶構造(電荷秩序状態)を安定化すると考えられる。さらに室温・高圧力下X線回折測定の詳細な解析結果から、結晶変態を伴わず10GPa付近で電荷秩序が消失していくことが分かった。しかし、高圧力相でのSm_4Bi_3,Eu_4As_3のSm, Euイオンの価数状態や磁気秩序の有無などはまったく調べられていない。 そこで我々は、高圧力下Sm_4Bi_3に磁気秩序が存在するか、またEu_4As_3の強磁性転移温度とEuイオンの価数の圧力依存性とを調べることを目的に、放射光単色X線を用いた低温・高圧力下^<149>Sm,^<151>Eu核共鳴前方散乱(NRFS)(放射光を用いたメスバウアー分光)測定を行った。^<149>Sm NRFSの結果、高圧力相2.3GPaでは120Kの高温で磁気秩序が起こることが分かった。この磁気転移温度は常圧力下の磁気転移温度2.7Kよりも非常に高いことから非磁性Sm^<2+>イオンが磁性Sm^<3+>イオンへと変化したことが示唆される。 一方^<151>Eu NRFS測定結果から、磁気転移温度は約10.5GPaまで圧力と伴に直線的に増加し、それ以降は圧力依存性が殆どないことが分かった。この異常は室温・高圧力下X線回折測定の結果と対応している。しかし、10.5GPa以上の高圧力下常磁性状態で量子ビートが観測されたことから、単純に電荷秩序が消失するのではないとが分かった。
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