研究課題
近年我々が開発したmultiple small tunnel junction (MSTJ)法やそれに関連する技術を用いて、サイズが超伝導コヒーレンス長程度のメゾスコピック超伝導体の超伝導状態に関する測定と理論解析を行い、以下の成果を得た。1.メゾスコピックディスク(円板)内を流れる超伝導電流の対称性を調べ、巨大渦糸状態が存在する実験的な証拠をはじめて得た。また、複数の渦糸が合体したり配置をかえる相転移を観測し、理論計算とのよい一致をみた。この成果に関して、数々の招待講演を行うとともに、英文、日本文の解説等を執筆した。2.円板試料の渦糸侵入磁場、渦糸排出磁場を詳細に調べた。その結果、後者の温度依存には2種類あることを見出し、それらが多重渦糸状態、巨大渦糸状態からの転移であることの実験的な示唆を得た。また、非線形ギンツブルグ-ランダウ理論に基づく数値計算によってこのことを確認した。3.矩形、三角形試料の渦糸排出磁場についても、温度依存に2種類があることを見出した。それらはほとんどの場合、多重渦糸状態、巨大渦糸状態に対応するが、試料形状の対称度が低い場合には、まれに例外があることを数値計算によって示した。4.上記2,3の判断基準を用いて、巨大/多重渦糸状態の安定性の試料サイズ依存性、温度依存性を実験的に調べるとともに理論計算も行い、メゾスコピック渦糸状態の基本的性質を明らかにした。さらに、欠陥が安定性に及ぼす影響を議論した。5.穴が中心からずれている非対称リングについて理論的に予言されている「1次元渦糸状態(単連結超伝導状態)」を検証するためのMSTJ測定を行った。その結果、1次元渦糸状態と思われる特性をはじめて観測した。理論との定量的な比較を行うために、アントワープ大、テクニオン(イスラエル)の4人の理論家に協力してもらって理論解析を行っている。
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