研究概要 |
本研究では、磁性強誘電体酸化物において巨大な電気磁気効果を示す物質系を開拓し、巨大電気磁気効果としての自発分極の磁場制御、その逆効果としての電場による磁気構造制御、巨大な光学的電気磁気効果(磁気カイラル効果)の観測を行ってきた。 電気磁気効果の巨大応答の実現を目指し、時空間対称性の破れに加えて電子系の多重臨界性、掌性、フラストレーション効果を利用することで、新たな磁性誘電物質群を探索した。具体的にはRMnO_3、Pr(Sr,Ca)_2Mn_2O_7などペロブスカイト型マンガン酸化物、CoCr_2O_4などスピネル型クロム酸化物、Cu(Fe,Al)O_2、LiCu_2O_2、などであり、それらにおいて磁場による電気分極制御に成功した。また逆に電場による磁気構造の制御を試み、放射光X線、中性子線などを用いて実際に磁性の掌性が制御可能であることを示した。 光学的電気磁気効果は、光アイソレータ等の光通信における新しい光学素子として様々な可能性を秘めている。この巨大応答を探求する目的で、希土類元素置換した(Ba,Sr)TiO_3、La_2Ti_2O_7等の大型単結晶の作製を作製し、光学的電気磁気効果に起因した発光スペクトルなどを実際に観測することが出来た。同様にLaMnO_3/SrMnO_3/LaAlO_3による人工3色超格子において磁性界面に由来する光学的電気磁気効果を観測することにも成功した。 理論的研究との密接な連携により、これらの起源が、スピンカレントやトロイダルモーメントといった量で特徴付けられる新たな電気磁気効果によるものであることを示し、新しいスピントロニクスの基礎学理にも大きく寄与したと考えられる。
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