研究課題
基盤研究(B)
放射光X線による内殻分光は、元素・軌道選択性をもつ微視的プローブとして物質科学研究に不可欠となっている。一方、磁場は、電子のスピンや軌道運動に直接作用し、電子状態を精密に変化させることができ、特に低温で量子効果が強く効いた現象を調べる上で、極めて有用な場である。従来、強磁場環境では、技術的な制約から電子状態を調べる手段はあまりなかったが、本研究では、パルス強磁場と放射光X線の組み合わせ技術を開発し、X線吸収分光、X線磁気円二色性分光によって、磁場中での電子状態をみる手法を確立した。また、その技術を、電子相関の強い、伝導電子-局在電子相関系に適用し、価数揺動現象の解明を行った。具体的な成果は以下の通りである。YbInCu_4における磁場誘起価数転移の解明Yb価数は低温で揺動状態にあり、伝導電子と強く混成している。40テスラ級の強磁場を印加することで、本来のYbの4f電子の局在性がほぼ完全に復活することを、X線吸収スペクトルによる価数の直接的観測から初めて明らかにした。EuNi_2(Si_<1-x>Ge_x)_2における価数揺動状態の解明低温の価数揺動状態が磁場により局在的に変化するのはYbInCu_4と同様であるが、完全に局在化せず、40テスラ磁場中でも価数揺動状態にあることをX線吸収スペクトルから明らかにした。また、40テスラ強磁場でのX線磁気円二色性スペクトル測定を世界で初めて実現させ、状態混成に起因した特徴的な円二色性スペクトルを見出した。以上の成果は、伝導電子-局在電子相関の理解の進展に大きく貢献すると期待される。
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http://www-lab.imr.tohoku.ac.jp/~matsuda/index.html