研究概要 |
本年度の研究によって下記の成果を得た。 (1)有機導体θ-ET2RbZn(SCN)4の急冷相において,42K以上で巨大な非線形伝導を見出した。その電気特性の解析結果から,電流によって生じた電場が非線形伝導により本質的であることを見出した。またθ-ET2RbZn1-xCox(SCN)4の電流電圧依存性の解析から,ZnとCoの混晶効果による乱れは,系の電気特性に顕著な影響を与えていないことを見出した。 (2)有機導体と非常に似た電流電圧特性を示す無機化合物BaIrO3を発見し,その物性を調べ,国際専門雑誌や国際会議で発表した。 (3)θ相で有機導体以外に,(TSM-TTP)(I3)5/3,(EDT-TSF)2GaC14,(MDT-TS)(I2Br)0.420,β-(meso-DMBEDT-TTF)2PF6などといった有機導体で相次いで同様の巨大非線形伝導を見出し,それぞれの特徴から非線形伝導の起こる機構について議論した。 (4)異なる平衡にある二つの熱浴にはさまれた量子系について,非平衡定常状態を特徴付ける新しい条件を提案し,非平衡定常状態の線形応答関数の表式を導出した。さらに、強いクーロン相互作用が存在する量子複合系についてFano共鳴が非平衡環境に敏感に依存することを示した。また、Peierls導体において非平衡ソリトン状態の存在を示した。
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