研究課題/領域番号 |
17340119
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
甲斐 昌一 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (20112295)
|
研究分担者 |
日高 芳樹 九州大学, 大学院・工学研究院, 助教 (70274511)
|
キーワード | 非線形物理学 / 非平衡統計力学 / ゴールドストーンモード / 対称性の破れ / ソフトモード乱流 / 揺動定理 / 液晶 |
研究概要 |
本研究では、非平衡開放系の散逸構造の示す非線形揺動の統計力学的な性質を、揺動散逸定理を中心とした平衡あるいは線形非平衡系で確立されてきた統計力学とのアナロジーにより明らかにすることを目的としている。研究対象である液晶電気対流系では、液晶分子の配向制御によって連続回転対称性をもつ系をつくることができ、その対称性の破れに伴って生じる時空カオスであるソフトモード乱流を揺動としてとらえる観点から研究を行ってきた。本研究ではさらに次のような研究成果を得た。 われわれは以前、ソフトモード乱流におけるブラウン運動を観測し、拡散係数の粗視化時間依存性を求めることによって輸送現象の観点から統計力学的な性質を明らかにした。今回はさらに、粒子に一定外力が加わる系でのブラウン運動を観測し、仕事に現れる揺動について調べた。その結果からソフトモード乱流の揺動力の大きさを拡張された温度によって定量化することに成功し、約400万Kという値を得た。また、これまで熱揺動で研究されてきた揺動定理(Gallavotti&Cohen)をこの揺動に適用することを試み、上記の温度との比較を行った。その結果、短い時間スケールでは揺動の時間相関のために両者の間にずれがあるが、時間スケールを長くすると一致していく傾向があることがわかった。 また、磁場印加によって連続回転対称性を破った系において、制御パラメータの増加による空間周期パターンから時空カオスへの転移を調べた。その結果、対流振幅が転移点で飛びを示すが、その転移はヒステリシスを伴わないことが明らかとなった。この結果は、同じ対称性をもつ理論モデルであるニコラエフスキー方程式から得られる結果と一致し、この特徴的な転移が異なる振幅スケーリングが転移点で切り替わるために起こることがわかった。
|