本年度は先ず従来のアトムチップを用いたボーズ凝縮(BEC)^<87>Rb原子を用いた原子干渉計の研究を引き続き行い、従来の干渉計において問題となった原子間相互作用および磁場ポテンシャルによるデフェージングの影響を回避する新奇な原子干渉計を考案し、これを実験によって実証した。新しい干渉計においては調和ポテンシャルの振動周期に一致してBECの分割および再結合を行う光パルスを入射することにより相互作用時間50msにおいて高いコントラストの干渉信号を得ることができ、さらにこれを100ms程度まで延ばすことが可能であることが実験によって確認された。このためトラップ中のBEC原子を用いて長い相互作用時間が得られる原子干渉計が実現可能になったことから、これを様々な物理量の精密計測へ応用することが可能になった。 次に従来のアトムチップにおける金属電極表面近傍における原子のロスを低減するため、電場と磁場のハイブリッドポテンシャルを用いた新しいアトムチップの開発を行った。現在までのところ真空装置およびレーザー光源が完成し、磁気光学トラップによってBEC生成に十分な約10^8個のレーザー冷却^<87>Rb原子を集めることができた。 さらに従来のBEC原子の代わりにフェルミ縮退原子を用いた原子干渉計の実現をめざしてアトムチップ1を用いた^<40>K原子と^<87>Rb原子の共同冷却を行うための実験装置の開発を行った。現在までのところ光誘起脱離法を用いて磁気光学トラップによる^<40>K原子と^<87>Rb原子の同時トラップを実現し、チップ上での共同冷却に必要な4×10^6個、6×10^7個の原子をそれぞれ集めることができた。
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