本年度はアトムチップを用いて生成されたボース凝縮Rb原子を用いて光定在波パルス中の原子の運動量状態のダイナミックスの研究を行った。2つの対向する光からなる定在波を原子に入射する原子は光の反眺運動量をもらって両方向に加速されるが、初期状態に二つの運動量成分の重ね合わせ状態を用いると原子はある特定の方向に選択的に加速されるいわゆる量子ラチェット効果が出現することを見出し、これを実験で実証した。この効果は純粋に量子力学的な原子波の干渉効果によるもので、一種の原子干渉計が構成されていることが理論的な解析により明らかになった。またこれとは異なる別の運動量状態間の重ね合わせ状態を用いることにより、原子波をある特定の運動状態に集めることが可能であることが分かり、これは量子サーチなどへ応用することが可能であることが分かった。またボース凝縮原子のようなマクロな数の原子による原子光学だけでなく原子1個1個を操作してその粒子性および波動性を制御する量子原子光学の研究を行うため、1個から数個のレーザー冷却Rb原子を光双極子トラップを用いて捕捉および操作する実験を行った。また2つの原子間の相互作用を大きくして量子力学的な相関を実現するため、トラップされた少数個Rb原子をRydberg状態に励起する実験を行い、トラップロスよりRydberg状態への励起が確認された。今後さらに研究を進めることにより原子間の量子相関を用いた非古典的な量子状態の実現およびこの量子情報処理への応用が可能になると考えられる。
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