研究概要 |
本研究では研究期間中に以下の研究を行い成果を得た。 1.超流動液体ヘリウム中に散布された原子が液体ヘリウム中に泡を作ってその中に閉じ籠もること,および,その原子の励起状態においては原子は単独で存在せず幾つかのヘリウム原子が付着した励起錯体を作る場合があることが知られている。我々は以前,超流動液体ヘリウム中に散布したマグネシウム原子をレーザー誘起蛍光分光によって測定したところ,3s3p励起状態のマグネシウム原子は10個程度のヘリウム原子が付着した励起錯体を形成している可能性があるという結果を得ている。しかしこれは,従来の常識では,マグネシウム原子のようなアルカリ土類原子では有り得ないこととされてきた。そこで本研究では,レーザー誘起蛍光スペクトルのヘリウム圧力依存性を調べ,それを理論計算結果と比較することによって,マグネシウム原子の励起錯体形成の更なる証拠を得た。 2.上記1で述べたマグネシウム原子の励起錯体形成を更に確かめるために,5K〜10Kの低温ヘリウムガス中にマグネシウム原子を注入した場合のレーザー誘起スペクトルの測定を行った。これは本研究開始の前年度までにヘリウム4ガスに関して行い肯定的な結果を得ていたものであるが,本研究では,これをさらにヘリウム3ガス中にマグネシウム原子を注入した場合について行った。実験は,あいにくマグネシウム原子を散布するために必要なYAGレーザーの故障によって,測定のために十分な個数の原子を散布することが出来ず,ヘリウム-4の場合ほどの鮮明なスペクトルを得ることは出来なかったが,励起錯体の形成時に特有なスペクトルが得られ,励起錯体形成が確認された。 なお,これらの研究とは別に,非線形分光法によるロトンの直接観測も試みたが,主としてガラスセルによる強い迷光のため,成功には至らなかった。このことから,この目的のためにはクライオスタットの更なる改良が必要であることが分かった。今後,この改良を行って研究を進める予定である。
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