研究概要 |
本年度は低速度における雪クレーター形成実験を行ない,衝突速度150m/s以下において形成されるクレーターの形態的特徴をスケーリング則の観点から調べた.特に,焼結時間依存性に注目しクレーター形成効率における焼結度依存性について実験を行なった. 焼結時間が15分(一定)である場合,-10℃では速度増加とともにクレーターサイズが大きくなるのが確認できる.速度が遅い場合,弾丸である雪は破壊されずに付着して残存するが,速度増加とともに弾丸は粉々に破壊し,その痕跡のみが氷微粒の環状構造として確認できる.温度が低くなると速度が同じでも,クレーターサイズは極端に大きくなる。これは低温のため雪の焼結が進まず,強度による抑制を受けなかったからだと考えられる.また,弾丸が氷の場合,破壊することなくクレーター中心部分に深く潜り込み,実験後に元のまま回収される.温度が高い場合,今度は焼結が進むのでクレーターサイズは小さくなる. クレーター体積と弾丸の運動エネルギーの関係は,各温度,弾丸種類毎にべき乗の実験式でフィットでき,そのべき指数は条件に関係なくほぼ0.5と一定である.相関関係は温度が低くなるほど上方に移動し,弾丸が氷と雪の場合では氷の方が,系統的にクレーター体積が大きくなる.今回の実験条件では,-5℃と-18℃で3倍程度のクレーター体積の系統的差が生じた. 雪試料の強度は,焼結時間により大きく変化することが知られている.そこで焼結時間を3分から60時間の間で変化させ,クレーター形成実験を行った.-10℃,衝突速度100m/sでの回収試料を観察すると焼結時間が長くなるほど,クレーターサイズが小さくなることがわかる.クレーター体積と焼結時間の関係を調べると,クレーター体積は時間のべき乗で減少することがわかった.
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