研究課題
基盤研究(B)
彗星表面に形成される衝突クレーターを実験室で再現するために、雪試料を用いたクレーター形成実験を行った。特に、彗星表層での熱進化とクレーター形状の関係を明らかにするため、雪の空隙率と焼結に注目した実験を行った。空隙率40%の雪試料を温度-10℃で15分間焼結させた場合、衝突速度(<150m/s)とともにクレーターサイズが大きくなるのが確認できた。クレーター体積と弾丸の運動エネルギーの関係はべき乗の実験式でフィットでき、そのべき指数は条件に関係なくほぼ0.5と一定であった。-10℃で焼結時間を3分から60時間の間で変化させてクレーター形成実験を行った結果、焼結時間が長くなるほどクレーターサイズが小さくなることがわかった。そして、クレーター体積は焼結時間のべき乗で減少した。また空隙率50%の雪試料にナイロン弾丸を衝突速度2.7km/sで衝突させた所、形成されるクレーターはスポール破壊によると思われるリング状の外縁部を持ち、その中に球形を示すクレーターが観察された。さらにクレーターの底面および側面に氷が融解して再凍結してできたと思われる薄い層が確認された。このことから、衝突速度2.7km/s(衝突点圧力〜3.9GPa)以上では、空隙率50%の試料においてはクレーター形成時に十分な量の氷が衝突溶融を起こすことがわかった。この高速度衝突にともなう温度上昇を定量的に見積もるために衝突残留温度の計測実験を行った。氷-氷衝突により形成されたクレーター孔を赤外線ビデオカメラで観察した結果、衝突速度300m/sまでは衝突点付近における温度上昇が観察された。温度上昇の最大値は衝突速度とともに2Kから9Kまで増加した。クレーター孔に蓄積された衝突残留熱を見積もった結果、弾丸の運動エネルギーの1%-10%が衝突残留熱に分配されることがわかった。
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