研究課題
種々の地学現象はプレート運動やマントル対流に基づき説明されているが、これらの現象に伴う地球全体の慣性モーメントの変化を原因とする現象はあまり研究されていない。プレート運動はアイソスタシーを保ちながら進行するので、全地球レベルでの慣性モーメントの変化は小さく極移動量は小さいと一般的に考えられている。マントル内部での急激な変動は、有意な慣性モーメントの変化を誘起し、極移動が生じる可能性がある。これらの地球回転変動の結果、気候変動や海水準変動が生じ、堆積作用にも大きな影響を与える可能性がある。本研究では、これらの一連の変動を定量的にモデリングし、地球内部のレオロジーや気候変動・地学現象の評価に貢献することを目的とする。本年度は昨年度完成させた"大陸移動がどの程度極移動を引き起こすか"のプログラムによる研究を進めた。その結果、大陸移動に伴う慣性モーメントの変化は、アイソスタシーが成立しているため粘性緩和が生じず、非常に有効に極移動に影響を与えることが判明した。これらの結果は下部マントルやリソスフェアの粘性率に依存するが、過去2億年間の極移動は大陸移動に大きな影響を受けていることが判明した。本年度の研究は、地球科学における基本的な問題であり未だ解決されていない「極移動の原因は何か」に大きな貢献をしたと考えられる。これらの結果は国際誌に受理され印刷中で、"大陸移動は極移動の原因になり得ない"との論文の著者からも私の主張に賛同するコメントをもらっている。以上の結果は、大陸移動に伴う極移動はグローバルな海水準変動に大きな影響を与えることを意味している。大陸移動・極移動を考慮したグローバルな海水準変動のモデル化を行い、プログラムも完成し、現在論文をまとめている段階である。現段階で、大陸移動-極移動-海水準変動のモデル化は完成した。
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