研究概要 |
種々の地学現象はプレート運動やマントル対流に基づき説明されているが、これらの現象に伴う地球全体の慣性モーメントの変化を原因とする現象はあまり研究されていない。プレート運動はアイソスタシーを保ちながら進行するので、全地球レベルでの慣性モーメントの変化は小さく極移動量は小さいと一般的に考えられている。マントル内部での急激な変動は、有意な慣性モーメントの変化を誘起し、極移動が生じる可能性がある。これらの地球回転変動の結果、気候変動や海水準変動が生じ、堆積作用にも大きな影響を与える可能性がある。本研究では、これらの一連の変動を定量的にモデリングし、地球内部のレオロジーや気候変動・地学現象の評価に貢献することを目的とする。 本年度はマントル対流と大陸移動に伴う慣性モーメントの変化を考慮した極移動の研究を進め、大陸の集積・発散(Wilsonサイクル)の影響が極移動に大きな影響を及ぼすことを示した。つまり,集積過程においては大陸移動に伴う慣性モーメントの変化が極移動に大きな影響を及ぼし,発散過程においてはマントル対流に伴う変化が重要であることを定量的に示し、これらの結果を国際誌に投稿し、2008年にGeophysical Journal Internationalに掲載された。 また本研究課題の重要な項目である,マントル対流を考慮した第四紀氷床変動に伴う極移動と、外核表面の流れと電磁マントルーコア結合を考慮した地球回転に関する研究を進め、これらに関する論文2編を現在国際誌に投稿中である。 本年度の研究は、地球科学における基本的な問題であり未だ解決されていない、地質学的時間スケールでのマントル対流と極移動の関係、マントル対流を考慮した現実的な地球での第四紀氷床変動に伴う極移動の解明に大きな貢献をしたと考えられる。
|