研究概要 |
日本東方における海面水温分布の特徴のひとつに黒潮続流に沿う水温前線を挙げることができる.この前線付近では水温傾度が5℃/200km程度であり,水温が空間的に大きく変化する.このような黒潮続流前線を横切るGPSラジオゾンデ観測を東京大学海洋研究所研究船白鳳丸KH-06-01次航海にて行った. 観測期間全体にわたり海面付近の静的安定度を指標となる海面水温と海上気温の差は常に正で,不安定となっている.このため,仮温位の時間-高度断面においても各放球地点では約1000mより下部で鉛直勾配が小さく,混合層が形成されていたことを示された.混合層の上端では仮温位の鉛直勾配が大きく,この高度に逆転層が形成されていた.混合層内の仮温位は時間方向に一定ではなく,黒潮続流前線の北側で280Kを下回る仮温位となっていて,その前後の期間とは5K程度の温位差が示される.この低温位にあたる期間は黒潮続流前線の冷水側(主に北側)と一致しており,大気境界層の温位構造が水温の影響を受けていることを示唆している.さらに,シーローメータの第1雲底高度は概ね逆転層付近に示され,水温前線が雲の形成にも影響していることを示唆している. ワンタイムの観測のみでは大気境界層構造の変化には大気総観規模擾乱の影響も入るので,海洋による影響をより詳細に調べるために本航海に加え,同期観測した照洋丸などの観測データを合わせて海洋から大気への影響を今後より詳細に解析する.
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