研究課題
1.検証観測と解析:分散誤差・系統誤差一時間ごとの海洋レーダー計測の誤差を検討した。向かい合う二つの海洋レーダー(対面レーダー)が計測する同一地点の視線流速を比較したところ最大6.6-11.3cm/s程度の分散誤差があることがわかった。次にフェリー搭載ADCPによる長期間観測で得た潮流楕円と同地点で海洋レーダーが算出した潮流楕円とを比較したところ、潮流楕円振幅・位相・主軸方向のいずれでも数パーセント以内の違いに収まった。よって海洋レーダーの計測誤差は主に分散誤差にあると結論づけられる。分散誤差は標本平均により減少するので、長時間平均により信頼性が高くなる。例えば一日平均(24個の平均)で2.0-4.6cm/s程度、月平均で0.6-1.7cm/s程度まで減少する。2.海洋学的知見:とくにエクマン吹送流に関連してADCPによる筏観測で得た流速資料および別途得た海上風応力資料を基に、風応力が駆動する流速成分(吹送流成分;海面塊界層流)の鉛直分布を調べた。風応力と吹送流の間に一定の時間差(応答時間)を仮定して主成分解析をしたところ、第一主成分としてエクマン螺旋と見られる鉛直分布をもつ吹送流を検出した。また吹送流範囲を深さ18m、応答時間を11時間とした場合に推定した吹送流の輸送量が、風応力によるエクマン輸送量と最も良く一致することが分かった。標準理論によれば海面の吹送流は風応力の右45度を向くという(方位角差)。実際にはやや小さいという観測報告が多く、深さに依存する鉛直粘性や非定常性がこのずれの原因と考えられている。ここでは鉛直粘性を一様として変動風応力に対する応答を調べ、確率を加味して定義した方位角差が確かに45度より小さくなることを解析的に示した。なお今回の筏観測では逆の結果も得ており、更なる検討を要する興味深い問題である。
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