研究課題
太陽活動による成層圏循環の変化が対流圏・海洋にどのような影響を及ぼしうるかを、気象研究所大気海洋結合モデルの成層圏に人工的な西風加速を導入して模擬的な太陽活動の変化を与えることによって調べた。この結果、対流圏に対する太陽放射の変化がなくとも成層圏循環の変化により全球年平均気温が約0.5度変化する事が分かった。この様な循環場の変化が長期間続けばマウンダーミニマムに見られるような気温の低下が太陽常数の変化がなくとも太陽紫外線の変化による成層圏循環の変化をとおして起こり得るという示唆が得られた。ベルリン自由大学では大気大循環モデルを一新し、新しいモデルで上記と同様の成層圏に西風加速を加えて対流圏の応答を見る実験に取りかかり、現在初期的な結果の解析を進めている。レディング大学では新モデルの開発に手間取っており、このためレディング大学のグループとは対流圏準二年振動の太陽活動による変調の解析を共同で行い、熱帯海洋に対する太陽活動の影響の一つの様相を明らかにした。気象研究所化学気候モデルを使って、赤道成層圏準二年振動(QBO)における波動の東西風加速に対する役割や、QBOと冬半球中高緯度の関係、太陽11年周期の放射強制力における短波放射と長波放射の大きさを調べた。また、南半球環状モードへの影響を、観測と化学気候モデルの数値実験で調べた。一方、ベルリン自由大学の従来のモデルで行った太陽活動の影響の実験から赤道QBOの効果の違いを調べ、赤道QBOが東風位相の時は太陽活動の変化に対してより大きな大気のレスポンスが成層圏並びに対流圏で得られる事が分かった。このほか、ベルリン自由大学、レディング大学の研究協力者と共に本研究が課題としている「成層圏の化学的・力学的過程を通した太陽活動の影響」に関するワーキンググループ(SOLARIS)を立ち上げ、国際的な協力のもとに比較実験等を行って行く事を決めた。
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Geophysical Research Letters 33
ページ: L06804
Journal of Geophysical Research (in press)
ページ: L05703
Geophysical Research Letters 32
ページ: L12820
ページ: L13802