研究概要 |
地球磁気圏放射線帯の相対論的電子は人工衛星の電子機器等に悪影響を与えるため、その加速生成機構を解明することは非常に重要である。この加速機構の一つの可能性としてVLFホイッスラーモード波のコーラス放射と高エネルギー電子との波動粒子相互作用が注目されている。我々は内部磁気圏の磁場に相当する双極子磁場のモデルのもとに、相対論的エネルギー(数100keV〜数MeV)と位相のそろったホイッスラー波との相互作用の研究を進めている。サブストーム等の磁気圏の擾乱によって、磁気圏に注入された高エネルギー粒子のテスト粒子シミュレーションを行い、波の振幅が十分に大きい場合(数pT〜数100pT)には、磁気赤道付近で共鳴粒子の一部が捕捉され、相対論的効果によって非常に効率良い加速が起こることを発見した。この特異な加速機構を理論的に解析し、これをRelativistic Turning Acceleration(RTA)と名づけた[Omura, Furuya, Summers, JGR, 2007]。さらに、このテスト粒子シミュレーションを異なるエネルギーで繰り返し行い、相対論的粒子のエネルギー分布の時間発展を得ることに成功し、RTA加速過程の有効性を検証し論文投稿した[Furuya, Omura, Summers, JGR, submitted]。一方、スーパーコンピュータを駆使して、大規模な電磁粒子シミュレーションを実行し、コーラス放射の発生過程を再現することに成功した[Katoh and Omura, GRL, 2007]。これは過去30年余りのホイッスラーモード波に関する研究において謎として残されてきた物理過程を計算機上で再現した画期的な成果であり、米国地球物理学会誌の宇宙天気研究のEditor's Choiceとして取り上げられている。
|