ハワイの「すばる」望遠鏡など大型望遠鏡を利用した惑星観測を多く行い、とくに金星大気の組成や運動に関する新たな知見を得た。また、将来の惑星大気観測に向けて、探査機搭載用の赤外線検出素子など、新たな観測装置の開発を行った。惑星大気の分光撮像データの解析手法に関する研究を行い、これまでに得たデータに応用するとともに、2010年に日本が打ち上げる金星探査機PLANET-Cのデータ解析体制を構築した。 (1)大気中HCl濃度の緯度分布観測 金星大気の主成分であるCO_2は紫外線を浴びてCOやO_2に分解されるが、現実にはCOやO_2が少ない。この理由としてHClによる触媒反応を探るべく、IRTF望遠鏡を用いてHClを観測し、その空間分布からCO_2再生成過程を制約した。 (2)雲頂構造の時間変動観測 すばる望遠鏡とIRTF望遠鏡により金星の雲頂からの熱放射を中間赤外波長で観測し、水平スケール数100kmの微細構造の時間変動を世界で初めてとらえた。ここから、雲層内の熱対流の性質や惑星規模の波動の伝播について新たな知見を得た。また、ほぼ同時に取得した分光データから大気温度や雲粒密度の立体構造を導出した。 (3)PLANET-C搭載赤外検出器の開発と耐放射線試験 惑星探査機に搭載される機器は宇宙空間で降り注ぐ放射線に耐性を持つ必要がある。そこで国産の赤外2次元検出器の放射線照射試験を行い、暗電流変動の定量的評価およびその対策を考案し、その搭載に道を開いた。 (4)連続画像からの風速場導出手法の研究 地上望遠鏡やPlanet-Cによる将来の惑星大気観測を想定して、高空間分解能の連続画像データから風速場を導出する手法を研究した。従来使われてきた手法に誤ベクトル除去などの改良を施し、気象学で必要とされる数m/s以下の計測誤差を実現可能とした。
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