研究課題
遠く離れた場所の堆積層中に挟まれた同一の火山灰層は、広い地域内での厳密な同一時間面を示す鍵層として、学問上貴重な情報となる。そのため最近注目されているクリプトテフラ(肉眼では判別できないほど薄く隠れた火山灰層)の検出法として、本研究では放射化分析が有効な手段であることを提唱した。本補助金で構築させていただいたシステムを活用して、昨年度までに、日本海堆積物中の微量元素の連続垂直分布の測定が、アルカリ岩質クリプトテフラの検出に特に高感度である事を示した。本年度では、日本海南部から日本海東北部にかけての複数のコアを用いて、第四紀後期中に日本に降下したアルカリ岩質テフラ層をすべて走査して、検出したテフラ層内から抽出した火山ガラスの分析から、供給火山と噴火毎での化学組成の相違を見つけ出した上で、対比をおこない、明暗色互層の年代とも比較して、より精密なテフラ層序を確立する事を目的とした。本手法を用いて、東北地方西岸の4つの日本海コア内における3〜9万年前の年代での層を走査したところ、U-Ymテフラを含む2層の鬱陵島系テフラ(約3.8万年前と約6.1万年前)とB-Jテフラを含む3層の白頭山系テフラ層(約5.1万年前、約6.8万年前と約8.7万年前)が、それぞれ3つのコアから検出された。検出層から抽出した火山ガラス中の主成分・微量元素の定量を行い、噴火ごとの化学成分の違いを特定しつつある。コア間での各テフラ層の対比をおこなう事で、試料コア中の不明瞭な明暗色互層の年代も一部確定する事ができた。さらに北海道西岸の2つの日本海コア内の3〜15万年前の層について同様に走査したところ、B-VテフラやB-Jテフラを含む6層の白頭山系テフラ層が検出されており、白頭山の詳しい噴火履歴を再現できる事を明確にできた。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
geochemistry geophysics geosystems, 9(4)
ページ: Q04024
Geochimica et Cosmochimica Acta 10. 1016 / j. gca. 2008. 07. 021 72(D. O.I参照)