研究課題
基盤研究(B)
摩擦熔融時の海溝型地震ダイナミクスの全貌・本質理解を目的として、(1)付加体シュードタキライトの解析、(2)付加体泥質岩を用いた高速せん断実験、(3)イライトの熔融実験を行い、以下の成果を得た。(a)付加体シュードタキライトは主として含水粘土鉱物であるイライトが熔融して出来ており、摩擦熔融時の動的せん断応力は地震発生深度における'イライトの摩擦強度と比較して顕著に低い。このことは、地震発生深度において海溝型地震時に摩擦熔融層が形成されると、断層強度は大きく低下して、地震すべりを加速させ、破壊域を拡大させることを示している。(b)付加体泥質岩が摩擦熔融すると、垂直応力の低い断層浅部ほど摩擦熔融層に占める空隙・気泡の割合が増加して粘性率が増加し、断層強度が上昇してすべりが抑制されるようになる。付加体泥質岩はイライトのような含水粘土鉱物を多量に含んでいるので、ガブロや花崩岩など他の岩石と比較して、摩擦熔融層に空隙・気泡がより多く混入するポテンシャルを持っている。垂直応力に依存した摩擦熔融層の粘性率に与える空隙・気泡の効果は、付加体で発生する海溝型地震の震源域上限を決めるうえで重要な役割を果たしている。(c)イライトの熔融過程は、1)脱水と結晶度の上昇、2)透過光の減少と凝縮および八面体破壊とスピネル・ヘマタイトの出現、3)発泡と流動および四面体破壊とムライト・熔融物形成、の順に進行する。このうち1)、2)は900-1000℃、3)は1100℃で生じる。
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Journal of Structural Geology 29・4
ページ: 599-613
Earth and Planetary Science Letters (In press)
Journal of Structural Geology 29-4
Earth and Planetary Science Letters (in press)
地学雑誌 115・3
ページ: 353-366
Journal of Geography 115-3