研究概要 |
本年度は,2003-2004年度の約1年半にわたりニューカレドニアの水槽内で飼育したシャコガイ類および沖縄県水産研究センター八重山支所で養成していたシャコガイ類について成長線(年輪および日輪)の解析および炭素・酸素安定同位体比分析を行ない,(1)日単位の環境解析に適したシャコガイ殻の条件,(2)日輪幅変化の規制要因,(3)日単位の環境解析手法の開発と応用,について研究した.(1)については,石垣島のヒレジャコおよびヒレナシジャコ殻の内層の年輪・日輪解析結果から,年齢に関わらず日輪幅は季節変化するが,年間成長量のピークはそれぞれ7-8歳および5-6歳であり,比較的成長量が大きい約10歳までに形成された殻が日単位の環境解析に適していることを明らかにした.(2)の研究はニューカレドニアの個体(シャゴウ)を用いて行った.日輪幅の変化と環境因子の関係を重回帰分析等で検討したところ,日輪幅変化の主要因は水温変化と日射量の変化が関与していることが明らかとなった.ただし,この2つの要因では日輪幅変化の約半分しか説明することができず,今後更なる検討が必要なことがわかった.(3)では,全年度に購入した機器を用いて日輪毎の安定同位体比分析のための手法を開発し,ニューカレドニアの個体の同位体分析を行った.その結果,シャコガイ殻が酸素同位体比に関して海水とほぼ同位体平衡で形成されることが再確認されたが,炭素同位体比は明瞭な季節変化を示さず,部位によって変化パターンも異なることが明らかとなった. また,本年度に購入した分光器を増設したICP-AESで,シャコガイ殻の元素分析に関する予備実験を行うと共に,石垣島のサンゴ礁浅海域から,半ば化石化したオオジャコガイの殻を採取し,成長線解析や同位体比分析の準備を進めた. 研究協力者であるフランスIRDセンターのCabioch、ボルドー大学のCorreg両博士も、平成16年末に採取したシャコガイ殻の分析を進めている。
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