研究概要 |
本年度は,流体包有物分析システムの確立とゴンドワナ大陸断片の変成作用に関する基礎データを得ることを最大の目的とした.以下にその概要を要約する. 1.流体包有物分析システムの確立:新規購入した加熱冷却ステージと偏光顕微鏡を組み合わせ,流体包有物分析用の加熱冷却システムを構築した.このシステムにCCDカメラを用いた映像観察システムとビデオプリンターを組み込むことにより,5ミクロン以下の微小流体包有物を同定し,迅速に分析を行うシステムを確立した.現在,このシステムを用いて変成岩中のCO2,H2Oを含む微小流体包有物の溶融温度および均質化温度測定がルーチンで可能となった.今後はCH4を含む流体包有物の同定を行い,より広範囲の岩石への応用を計画している.また平成17年6月に海外先進教育研究実践支援プログラムにて研究協力者のDUBESSY教授(ナンシー大学)を訪問し,流体包有物のラマン分析の指導を受けた. 2.ゴンドワナ大陸断片の基礎データの収集:本研究の主な研究対象地域である南インド産高度変成岩の記載岩石学的・鉱物学的データをもとに,当該地域の変成作用についての議論を行った.本年度中に約750枚の岩石薄片の作成,約1300ポイントの鉱物化学分析データの取得,20サンプルの流体包有物分析を行った.また,平成18年3月に研究分担者のSANTOSH教授とともに南インドにて地質調査を行い,次年度以降の研究に必要な試料を得た.成果の1つとして,Manavadi地域から発見されたhogbomiteの化学組成およびラマン分光分析結果から,この鉱物が新しいタイプの元素置換パターンを示すことを明らかにした.また2番目の成果として,Namakkal地域からざくろ石+コランダムという非常に稀な鉱物組み合わせを発見し,Mgに富む十字石の存在から当該地域がエクロジャイト相に達する高温の変成作用の後,超高温変成作用を被ったことを明らかにした.以上の成果は本年度国際誌に投稿し,すでに公表済みである.
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