研究概要 |
宮下はオマーンオフィオライトにおいて,特異な組成を有する岩石(緑泥石岩)を発見した.産状の詳しい解析と全岩化学分析から,この成因は大規摸な熱水変質作用によるもので,強度のシリカ,アルカリ成分の除去,鉄の付加が生じていることを明らかにした.この発見は,海嶺下における熱水循環に関して新たな問題を提起している.また,ガブロ層と上位の岩脈群との間に出現する斜長花崗岩体の基底部に,大規模なゼノブロックを発見した.これらは大量の斜方輝石の出現によって特徴づけられ,角閃石をほとんど含まず,石英が大量に出現する場合があるなど,部分溶融がその場で生じたことが考えられる。これらは極めて不均質で,精密な化学分析の結果,メルトが集積している部分と,メルトが抜け出たレスタイト組成のものとが混在しているらしいことが明らかとなった. 一方,太平洋において世界で始めてガブロ層までの掘削に成功しI0DP Exp.309/312においても,ガブロの中には高度に変成された上記と全く同一の岩石学的特徴を有する変成ドレライトが存在することが明らかとなった.宮下はExp.312の共同首席研究者として宮下研究室の大学院生2名とともにこの掘削に参加した. 高澤はオマーンオフィオライト北部のフィズ岩体マントルセクションの地質調査と試料採取を行い,広域的な構造と鉱物組成変化を検討した。その結果,マントルセクションのスピネルの化学組成に海嶺セグメント構造に対応する可能性のある系統的な変化が認められた。また,雁行状に配列する高温剪断帯に沿って枯渇度の高いかんらん岩が分布していることも明らかになった. 前田はI0DP Exp.304/305において採取された大西洋や南西インド洋アトランティスバンクのガブロの系統的な分析を行い,.失われた集績岩の割合を推定するのに成功した.
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