研究課題
平成18年度は、前年度に実施した中国14都市でのエアロゾル試料の解析をうけて、泰山(北京の南、約500kmに位置する標高1500mの山)にある大気観測所にてエアロゾルとその前駆体の観測実験を実施した。時期は、5月25日から7月3日までの6週間であった。エアロゾル試料は、ハイボリュームエアサンプラー(1台)、PM2.5インパクターサンプラー(2台)を用いて採取した。ハイボリュームエアサンプラーと石英フィルターにより、1日または昼・夜の試料を採取し、低分子ジカルボン酸、炭化水素、多環芳香族炭化水素(PAH)、脂肪酸、アルコール、レボグルコサンなど糖、その他を測定するための試料を採取した。また、インパクターサンプラーを用いて、半揮発性アルデヒド類及び有機酸を気相と粒子相に分けて採取した。前者は石英含浸フィルター(BHAまたはKOH)にて、後者は石英フィルターにて採取した。光化学的生成と分解に関する詳細な情報を入手するために、3時間毎の試料採取を3日間にわたって連続に行った。観測終了後、試料は日本に送りガスクロマトグラフ、質量分析計を用いて有機物の組成分析を行った。低分子ジカルボン酸にっいては、測定を終了した。その結果、全ての試料でシュウ酸が最大濃度を示し、200-4000ng/m3の範囲で変動した。この値は、東京での報告値にくらべて数倍から10倍高く、有機物汚染が深刻に進んでいることがわかった。また、バイオマス燃焼で発生するレボグルコサンが高い濃度で検出され、小麦の藁の燃焼が重要な汚染源の1つであることが示唆された。一方、n-アルカンは奇数優位性を示し、化石燃料の汚染よりもバイオマス燃焼の寄与が大きいことと一致した。
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