研究課題
基盤研究(B)
南京で採取した冬と夏のエアロゾル試料を分析し、100種を超す有機化合物を解析した。試料中で最も高い濃度を示した化合物はレボグルコサンであった(160-484ngm^<-3>,av. 302 ngm^<-3>)。これはセルロースの燃焼過程で特有に生成する化合物であり、バイオマス燃焼のトレーサーである。この結果は、中国においては薪など生物燃料が主要なエネルギー源として使われていることと矛盾せず、それが大気汚染の重要なソースとなっていることを意味している。また、リグニンの熱分解生成物であるバニリン酸(21 ngm^<-3>)、シリンガ酸(14 ngm^<-3>)や、松脂の燃焼の際に(熱分解で)生成するデヒドロアビエチン酸(64 ngm^<-3>)も検出された。一方、植物起源の脂肪酸も高い濃度で検出された。しかし、ノルマルアルカンは植物の特徴的な奇数優位性を示さず、石炭・石油など化石燃料の燃焼による寄与が大きいことがわかった。冬においては、化石燃料燃焼とバイオマス燃焼が有機エアロゾルの主要ソースである。また、夏の試料では、シュウ酸など低分子ジカルボン酸が高い濃度で検出され、光化学反応による有機エアロゾルの生成が重要であることが明らかとなった。また、ほとんどの成分は昼間よりも夜間で2倍程度高い濃度を示し、冬季の夜間に形成された逆転層により汚染物質が地表付近に蓄積されることを意味している。中国内陸部と沿岸部の14巨大都市(北京、重慶、上海、香港など)で採取されたPM2.5エアロゾル試料を分析し、化合物レベルでの組成解析をおこなった。有機物は、西安・重慶など中国中西部において10 μgm^<-3>を超える極めて高い濃度を示した。このような値はこれまでに欧米や日本では報告例はない。これらはエアロゾル質量の2-7%、エアロゾル有機炭素の7-12%に相当する。冬においては化石燃料の燃焼起源のn-アルカン、PAH、および、生物燃料の燃焼によって生成するレボグルコサンが主要な有機物として検出された。また、夏に、フタレートが高い濃度で検出されたが、これは可塑剤としてプラスチック製品に広く使われているフタレートが蒸発したものである。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (4件)
Atmospheric Environment 41
ページ: 407-416
J. Geophys. Res. 112・D10307
ページ: doi:10.1029/2006JD008244
Environ. Sci. Technol. 41
ページ: 6920-6925
J. Geophys. Res. 112, D10307