研究概要 |
本研究では弱い相対論的電子ビームによりオーバーサイズ遅波導波管の表面波を励起することを目指した。まず,弱い相対論的領域では大電流の電子ビーム生成そのものも解決すべき重要な問題である。新しくディスクタイプの冷陰極を提案し,弱い相対論的領域で均一性の良いビームを発生させることができた。ビーム回収ポートについては,今後さらに検討する必要がある。 電子ビームとオーバーサイズ遅波導波管特姓の改善により20GHz帯で約500kW,40GHz帯で約200kWまで出力が上昇した。また,軸対称モードと非軸対称モードの制御が可能であることを実証した。遅波構造として矩形を採用して平坦なアッパーカットオフを実現し,比較的エネルギーの低い領域でチェレンコフ相互作用と遅波サイクロトロン相互作用が共鳴した異常ドップラー効果による表面波励起を行った。低磁場と低エネルギー領域での表面波励起とモード制御の成果であり,将来性の見込める成果といえる。 オーバーサイズ遅波導波管の電磁場特性を実験的に評価するためベクトルネットワークアナライザを用いた評価システムを準備し,空洞共振法により20GHz帯遅波導波管の分散特性を実験的に評価した。今後,ミリ波帯励起アンテナの検討を進めていく必要がある。 数値解析においては,数値の発散という問題を解決し,オーバーサイズ遅波導波管の固有モードである表面波が解析できるようになった。ビームの3次元的擾乱を取り入れた計算プログラムによりオーバーサイズ遅波導波管の固有モードおよび固有モードとビームの相互作用を調べ実験結果と比較検討した。 本研究の異常ドップラー効果による表面波励起は,プラズマ波動の基礎と応用の分野で重要な研究である。さらに流れのあるプラズマの波動とその応用の観点からも重要といえる。
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