研究概要 |
負イオン源プラズマから引き出される負イオンビーム形成過程の詳細について,プラズマ内での負イオン生成,負イオンのプラズマから引き出し口までの輸送,引き出し部での電位構造形成と衝突効果の影響に分けて調査中である.平成17年度は研究を遂行する上での基礎となる,光脱離プラズマ摂動計測と,負イオンプラズマ制御の調査を重点的に行った.特にプラズマ内での負イオンと背景分子との衝突に着目し,簡単な理論モデルを構築して得られる数値計算結果と,実験結果の比較検討を行った.その結果,一般的に用いられるパルスレーザーのような大きな擾乱を加えなくても,負イオン密度,負イオンプラズマの輸送速度の計測が行えることが分かった.これにより,光脱離プラズマ摂動計測に関する基礎過程についての解明が完了した.また,同様の中性粒子との衝突プロセスが引き出し口付近に形成されるシース領域にも生じると仮定して,粒子追跡による計算機シミュレーションを行ったところ,特にビームが収束する電位構造付近において,顕著なエミッタンスの増大が見られることが分かった. 負イオンプラズマの制御に関しては,既に一部で行われている静電型の電子温度制御に加え,中性気体流注入を行うことによって電子温度を低下しつつ,プラズマ密度を増大する手法を提案し,その効果を実証した.実際に負イオンの引き出し構造に組み込み,ビームの引き出し実験を行ったところ,定性的には期待された効果が得られているものの,十分な量の負イオンビーム電流が得られるまでには至っていない.現在の構造・材質では,中性気体流注入装置自体がプラズマの損失を引き起こす原因となっており,実際の装置に利用する上では,抜本的な構造・材質の検討が必要となる.基礎過程的には中性気体流注入の基本原理,および有効な設計指針が確認されており,特に小型の負イオン源を実現する際に有効な新規手法が得られた.
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