研究概要 |
本研究の目的は,高エネルギー加速装置や,熱核融合実験に用いられる中性粒子加熱装置に用いられるイオン源の性能に,イオン源の内部壁面状態が与える影響を明らかにすることであった.特に熱陰極を用いるタイプのイオン源では,イオン源壁面が陰極材料の蒸着によって壁での粒子反射率などが変化する.そこでフィラメント材料を変化させ,壁面への材料吸着状況を変化させた際のイオン源内プラズマ粒子の励起状態を調査した.その結果,(1)中性粒子の速度分布を計測した結果,非マックスウェル部分の高速粒子群は検出できなかったものの,原子や分子の速度から温度を求めると,放電電力に応じた粒子加熱を観測できることが分った.さらに測定方法の信号対雑音の比を改善することにより,壁面状態に応じた粒子速度分布の変化を直接的に観測できる目処を得た.(2)水素プラズマからの真空紫外域分光スペクトルに,熱陰極材料の堆積に起因すると考えられる変化が生じることを確認した.さらに,熱陰極を用いないプラズマ生成法を用いれば表面状態の経時変化は生じないと言う仮説を検証するため,13.56MHz,および2.45GHzの高周波励起によってプラズマを生成し,イオン源内壁の変化を目視した.その結果,(1)これらのプラズマ励起においても電極表面に再堆積が生じること,(2)イオン源の特性変化には数秒から数時間程度の速い変化と,数日の単位で生じる遅い変化があると分った.イオン源性能に,イオン源プラズマ-イオン源内壁表面相互作用が及ぼす影響を調査するため,負イオンプラズマの診断法やプラズマ堆積物評価法についても研究を行なった.その結果,プラズマの拡散速度を計測する手法や,微小な引き出し電圧のプラズマへの染み込みを調査する手法,堆積物をビーム照射によって計測する手法などを開発し,今後のプラズマ-壁面相互作用調査の研究に応用できるよう成果をまとめた.
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