研究概要 |
平成19年度はLHDにおける高Zペレットや高Z放電を利用して,多価に電離された高ZイオンからのEUV領域を含む真空紫外及び可視スペクトルを観測した.それを解析することにより多数の磁気双極子禁制線(M1)を発見及び同定した.特にMoやW等の高Z材料は将来の燃焼プラズマ(例えばITER)においてプラズマ対抗材料として使用することが見込まれており,それら多価イオンの振舞いを可視領域で観測するための貴重なデータを取得した.また,燃焼プラズマで重要な役割を担うα粒子計測のためにM1遷移を利用することを提案し,その基礎実験を行った.具体的な研究実績は下記の通りである. 1.主にArを例にとりM1遷移発光に関する物理機構(温度・密度依存性,高エネルギーイオン衝突影響等)を明らかにした.その結果,簡単なモデルを用いてそのスペクトル強度を計算することが可能となった. 2.磁気双極子禁制線の観測に必要な高Zペレットの溶発プラズマのパラメータや溶発位置を実験的に明らかにした.また,水素ペレット溶発プラズマとの比較を行った. 3.高Z多価M1遷移イオンのプラズマ中での振舞いを調べるために径方向不純物輸送に関する解析を行った. 4.M1遷移スペクトルを同定するために様々な元素のVUV及び可視スペクトル構造の解析を行った. 5.MoやWのEUV領域でのスペクトルを観測し,ITER等での計測の基礎データを算出した. 6.M1遷移の偏光スペクトルを観測し解析した.その結果,偏光を用いることにより高エネルギーイオン衝突成分を選択に観測できることを示し,そのイオンの密度やイオンの磁力線に対するピッチ角を計測できることを示した. 7.高閉じ込めプラズマでの(M1遷移を発光する)多価イオンの振舞いを調べるために,Hモード様プラズマを研究した.高閉じ込めプラズマでは高Zイオンは中心に集まる傾向があり,M1遷移を用いたプラズマ計測には有利に働くことが判った.
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