研究概要 |
金属原子やそのイオンに対して分子が一個ずつ溶媒和していく過程について、近年気相クラスターを用いて多くの研究が行われている。さらにこのような系では、金属原子-分子間の電荷移動(CT)に関しても興味を集めている。特に価電子が一個で紫外領域に吸収を持つ2族原子一価イオンと種々の分子からなるクラスターの光解離分光では、解離スペクトルの観測からCT状態を含めた励起状態の情報、および解離イオンの同定をおこなうことによって解離過程やその分岐比の情報が得られる。我々は最近Mg^+とヨウ化メチルからなるクラスターMg^+-ICH_3の光解離を行い、電子励起状態においてMg^+から分子へのCTやクラスター内反応が起こることを見いだした。さらに解離イオン飛行時間分布が、解離レーザー光(直線偏光)の偏光方向に対して変化する様子を調べることによって、光吸収と解離がどのようなポテンシャルに沿ってどのようなダイナミクスに従って起こるのかを議論した。本研究では類似系であるMg^+-XCH_3(X=F, Cl, Br, I)クラスターの光解離を行い、電子・幾何構造について知見を得るとともに、励起と解離のダイナミクスに関して考察し、ヨウ素原子系で見出された現象の一般性を検証した。その結果、ヨウ素原子系に見られような、原子イオンに局在した双極子遷移を考慮することにより決められる遷移モーメントベクトルに基づく直線偏光レーザーとの相互作用が他の系でも観測された。また、この効果によって引き起こされる特異的なダイナミクスは、親イオンの幾何構造に大きく依存することが明らかとなった。
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