研究概要 |
低温マトリックス単離赤外吸収分光法(固体ネオン/アルゴン/クリプトン,T>5K,resolution>0.065cm^<-1>)を用い、オゾン-水錯体の赤外吸収スペクトルを測定し、帰属した。錯体形成による赤外吸収波数のシフトからオゾンの中心酸素と水の酸素原子間で分子間結合が形成されていることを明らかにした。量子化学計算ではオゾン-水錯体が唯一の安定構造(double-decker構造)をもつことを示唆し、赤外吸収スペクトルから予測された構造と一致した。上記の分光学的情報は気相における錯体の検出及び紫外吸収スペクトルの帰属のための基礎的情報となる。 さらに低温マトリックス中におけるオゾン-水錯体の紫外光反応を研究し、錯体の大気化学における役割を検討した。紫外光照射により、オゾン-水錯体の減少及び過酸化水素の生成がみられた。光反応の波長依存性及び化学量論的考察から過酸化水素生成は大気反応におけるOHラジカル生成に対応していると結論した。本研究で決定した結合エネルギー、分光学的情報から、錯体形成の平衡定数を決定した。水錯体形成による紫外域の吸収係数変化、O(^1D)収率変化について考察した結果を併せて、オゾン-水錯体からのOHラジカル生成はオゾン単体に比べ0.01〜0.1%と見積もった。
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