研究課題
多電子励起分子では、一電子平均場近似やBorn-Oppenheimer近似が、基底電子状態や低い励起電子状態に比べて、成り立ちにくいと考えられる。その結果、特徴ある多彩なダイナミクスが出現すると期待される。本研究では、放射光および単色電子衝突を励起源として用い、多電子励起分子を探索し、その量子ダイナミクスを解明する。『放射光実験』前年度に測定したN_2の1光子吸収-2光子放出実験の結果を解析し、その多電子励起状態を初めて見出し、その量子ダイナミクスを明らかにした。その結果を論文として出版した。前年度に引き続きO_2分子を対象として1光子吸収-2光子放出実験を行った。前年度よりもさらに精度の高い測定を目指した。入射光子エネルギー約20-50eVの範囲にて、2光子放出角度二重微分断面積を測定した。断面積曲線中にはいくつかのピークが現れ、それらはいずれもO_2多電子励起状態に由来する。さらにNO分子を対象として1光子吸収-2光子放出実験を行った。断面積曲線は、入射光子エネルギー約25-50eVの領域で複雑な形状を示し、目下その形状を解析中である。O_2、NOともに、それらの二重イオン化エネルギー以上の領域においてすら、中性励起状態が存在し得ることを明らかにした。『単色電子衝突実験』角度依存コインシデンス電子エネルギー損失分光法により、CH_4の二電子励起状態を研究した。入射電子エネルギー80eV、電子散乱角12度と24度においてLyman-α光子で標識したCH_4の電子エネルギー損失スペクトルを測定し、2電子励起D2, D3, D4状態の量子ダイナミクスの解明にめどをつけた。またNH_3の二電子励起状態を解明するために、入射電子エネルギー100eV、電子散乱角8度の下で、Lyman-α光子で標識したNH_3の電子エネルギー損失スペクトルの測定を始めた。
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